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福岡地方裁判所小倉支部 昭和35年(ワ)883号 判決

原告

早津一男

右訴訟代理人弁護士

岡本拓

(ほか三名)

被告

ダイヤ産業株式会社

右代表者代表取締役

中塚力

同所同番地

被告

中塚力

右被告両名訴訟代理人弁護士

村田利雄

篠原武夫

右被告両名輔佐人弁理士

沢木誠一

門間正一

主文

被告両名は、原告に対し各自二、九二三、〇六〇円およびこれに対する昭和三五年十二月一日から支払ずみまで年五分の割合による金員の支払をせよ。

原告のその余の請求は、棄却する。

訴訟費用は、被告両名の連帯負担とする。

この判決は、原告において、被告両名に対し、それぞれ一、〇〇〇、〇〇〇円の担保を供するときは、確定前に執行できる。

事   実≪省略≫

理由

(中略)(損害賠償請求について)

八、被告両名の責任および賠償すべき額。

(一)  被告両名の責任

検証の結果(第一回)によれば、被告会社は、少くとも昭和三五年四月一日から同年一〇月一二日までの間、被告会社の製品を製造販売していたことが認められ、被告会社の右製造販売が、本件実用新案権を侵害したものであることは前説示のとおりであるから、被告会社はその侵害行為について過失があつたものと推定され、この推定を覆えすに足りる証拠はない。したがつて、被告会社は、過失により原告の本件実用新案権を侵害したものとして、原告に対し、前記製造販売により生じた損害を賠償すべき責任を負担しなければならない。

また、前記製造販売は、被告会社の代表取締役である被告中塚の職務の執行としてされたものであることは、当事者間に争いがなく、前示認定の事実に、いずれも(証拠―省略)を総合すれば、被告中塚は、おそくとも昭和三五年一月二五日ごろには原告らの警告等により、本件実用新案権の存在を知つていたものであり、こと種物件の製造販売に関与するものとして通常要求される注意義務を尽せば、前記製造販売が本件実用新案権の侵害行為となることを知りうべきであつたにもかかわらず、かかる注意義務を尽さず、被告会社に前記製造販売を実行させたものであることが認められる。しかして、被告中塚は、被告会社の代表取締役として、違法行為を構成するがごとき不当な業務執行については、未然にこれを防止し、もつて、会社の利益をはかるべき注意義務を、著しく欠いたものというべく、右職務懈怠については、少くとも被告中塚に重大な過失の責任を認むべきである。よつて、被告中塚もまた、原告に対し、被告会社が前記製造販売によつて原告にこうむらせた損害を賠償すべきものといわなければならない。

(二)  賠償すべき額

検証の結果(第一回)によれば、被告会社が、昭和三五年四月一日から同年一〇月一二日までの間において、製造販売した被告会社の製品の台数および販売価格は、特A型を除く他の三種については、いずれも別紙目録記載の台数および価格を下らないことが認められ、特A型についても、その販売価格が別紙目録記載の価格を下らないこと、およびその二七台は販売されたことが認められるが右台数を超えて製造販売されたことを認めるに足りる証拠はない。

また、(証拠―省略)ならびに弁論の全趣旨によれば、被告会社の製品の前記各品種の製作原価が別紙目録記載のとおりであることが認められる。

しかして、前記(証拠―省略)および弁論の全趣旨によれば被告会社が被告会社の製品の製造販売により得た純利益は、前記販売価格から製作原価を差し引いた価格の七割とみうることが認められ、右認定を覆えすに足りる証拠はない。してみると、被告会社が記載認定の台数を製造販売して得た純利益は合計二、九二三、〇六〇円となる。

そして、被告会社の受けた利益の額は、当時本件実用新案権の権利者であつた原告の受けた損害の額と推定されるところ、右推定を覆えすに足りる証拠はない。

したがつて、被告両名は、それぞれ原告に対し、前記認定の損害金二、九二三、〇六〇円およびこれに対する最終の侵害期日後である昭和三五年一二月一日から支払ずみまで年五分の割合による民法所定の遅延損害金を支払うべき義務がある。

(むすび)

以上説示したとおりであるから、原告の本訴請求は、右理由ありとした限度で、これを認容し、その余は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第九二条但書、第九三条第一項但書を、仮執行の宣言につき同法第一九六条を、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官山本茂 裁判官富山修 中野辰二)

目  録(省略)

第一、第二図面(省略)

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